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Hey!Say!JUMPの有岡大貴さんが音声ガイドを務める
COIN PARKING DELIVERYさんの2年ぶり6回目の個展「GIVE ME TIME TO BLOOM」。
前回は、入場方法や注意点をご紹介しました。
今回は、会場で聞いた音声ガイドの解説を元に
作品もご紹介しながら徹底解説していきます。
会期中に観にいけないよ・・・という方は
ぜひ本ブログにてお楽しみください。
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個展全体の共通シンボル
今回の個展では、コインパーキングデリバリー、以下CPDが描く
現代社会のジレンマ、繋がりと愛、人間と社会、生産と消費というテーマを、
誰もが馴染みのある形で表現しています。
2023年に行われた個展を機に2年ぶりに開催する本展では、
スカルプチャーだけではなく、過去最大級の大きさを含む新作13点が発表されています。
個展全体を楽しむための共通するシンボルを読み解いていきましょう。
ハート
1つ目は「ハート」です。
多くのハートが象徴するのはコミュニケーションや承認欲求、
それらを可視化し、無機質な形で表現しています。
©️
次に「©️」。
これは物質的資本からアイデア資本へと移行した現代社会を象徴しています。
人間の情報量を超えた所有権の世界で、「これは私のものだ」というアイコンとして登場しています。
エンロール
最後にエンロール。
エンロールとは、CPDが目と口の関係性をテーマにしたセカンドエキシビジョンで発表されたアイコンです。
メインビジュアルでも印象的な目のアイコンですね!
その名前が示すように、人を巻き込む力を象徴しています。
目と口は、光を屈折させ食物を摂取するためのものであり、
周囲の危険を瞬時に察知する、その役割は生物学的なものです。
しかし、人類はその目を進化させ、アイコンタクトという形で他者とより深い交流を持つ能力を得ました。
目はもはや単なる視覚器官ではなく、他者を巻き込む力を持つ重要な存在となったのです。
白目が大きい人間という生物は、目という概念を超えて相手を引き込む力を持っています。
この目の力こそが、人間が人間である理由の1つとも言えるでしょう。
この3つのアイコンを元に、CPDがどのように社会との繋がりを表現しているのか、
本個展ではその魅力を体感できます。
いろは歌
「いろは歌」は、仏教の教えを伝えるために作られた詩で、50音ではなかった当時の47音を、
一文字も被らずに使用し、諸行無常を表現しています。
全てのものはうつろい、やがて消えていきます。
桜のように美しいものも、咲いた後には散り、いつかはなくなります。
どんなに流行したものでも、どんな地位の人間でも、それが永遠に続くことはありません。
全ては変わり、やがて消えていく。
それは誰であっても等しく起こりえます。
だからこそ、その現実を受け入れることが大切だと、この詩は語りかけているのではないでしょうか。
それが「いろはにほえど、ちりぬるを、わがよたれそ、常ならむ」という言葉に込められています。
この教えは現代の私たちにとって大切なものです。
ただ無常を嘆くのではなく、どんなに厳しい状況でも生き抜き、苦しみを乗り越える、
そんな強い意思が、この詩には込められているのではないでしょうか。
昔の人々にとって山を越えることは大きな試練でした。
けれども、その先には安堵や平穏が待っていました。
まるで、人生の苦しみを超えた先に、本当の幸せがあることを示しているかのようです。
それが「ういの奥山、けふ越えて、浅き夢見し、酔いもせず」という言葉に込められている気がします。
「いろは歌」は、無常の教えを超えて現代を生きる私たちにも、大切なメッセージを届けているのです。
この作品には日本の文化を取り入れ、今を生きる人たちにも「いろは歌」の意味を深く感じ取ってもらいたい、
そんな願いが込められているのです。
So,you don't have to work
「So,you don't have to work」
この言葉、どのように感じますか?
「だから働かなくていい」。
軽やかで希望に満ちた響きに感じ、色とりどりの文字が、まるで自由そのもののように感じますね。
でもそのすぐそばに、小さく黒く、静かに書かれたもう1つの言葉
「Work everyday」
毎日働く。
繰り返し果てしなく仕事をしなくてもいいように毎日働く。
そんな社会のジレンマが、このシンプルな2つの言葉の間に挟み込んでいるように思います。
働くことで得た地位が新たな繋がりを生み、その繋がりがまた更なる労働を、
終わりのないループ、抜け出せないサイクル。
一方は希望に満ち、もう一方は現実を突きつける。
どちらかが欠けても成り立たない。
このバランスこそが、私たちが生きる世界そのものなのかもしれませんね。
Hype illusion
「Hype illusion」
「誇張された幻想」という意味を持つこの言葉は何を示しているのでしょうか?
この鳥の名は叭々鳥。
本作品を描くに当たり、CPDが特に影響を受けたのは伊藤若冲の「月に叭々鳥図」であり、
そこから着想を得て、月を背景に飛ぶ叭々鳥を描いています。
月は昔から神秘的存在として、多くの作品のアイコンになってきました。
そこにマルシーを重ねることで、普遍的なテーマに現代の視点を加えているのではないでしょうか?
また中国では、叭々鳥は縁起の良い存在とされています。
その一方で、親を食べるという噂もあり、縁起の良い存在として語られているだけではありません。
しかし実は、叭々鳥は親を食べる習性がないようです。
実際の生態では起こらないにも関わらず、この話は長い時間をかけて広まり、定着していきました。
まるで現代の情報の発信の広がり方と似ているように感じませんか?
噂は、元々価値観や教訓を伝えるものですが、時代や文化によって解釈が変わっていきます。
この作品は、そうした噂の力や固定観念が生まれるプロセスを表現しているのかもしれません。
叭々鳥のアイコンが持つ家族というテーマ、月の持つ魅惑的側面、
「Hype illusio」という言葉、この3つのアイコンを読み解き、
あなたはどのようにこの作品を見るのでしょうか?
GIVE ME TIME TO BLOOM
本展におけるメインの作品「GIVE ME TIME TO BLOOM」は、
「私に咲かせる時間をください」という意味で、
本展のテーマともなる、今の社会問題に嘆きを込めた一言とも捉えられます。
たくさんのハート、そこに点在するマルシーやエンロールが、
どのように結びつくのか見る人に問いかけます。
繋がりたいという欲求と独占したいという欲望、
そして傍観者という存在が交差するバランスを描いており、
その中に生じる葛藤がこの絵画の中に浮かび上がります。
最初に何が目に飛び込んできましたか?
おそらく圧倒的なエンロールに引き込まれたのではないでしょうか。
その後、自然と文字へ眼線が移り、背景の中央表現がゆっくりと浮かび上がる。
更に、文字を読み終えた後に少し距離を取ってみると、
最初は気づかなかった構成や眼線の誘導に気づく。
このプロセスが作品の面白さを形作っているのです。
まるで一つの物語を追うように視線が作品の中を旅しているように感じられますね。
これは単なる視覚的な美しさではなく、意図された動きの体験なのかもしれません。
人間の能動的な思考回路に働きかけるこの作品。
眼線が動くことで意味が生まれ、その動きそのものが作品の一部になっている。
見れば見るほど新しい発見がある。
あなたは、この視線の旅の先に何をを見つけましたか?
GIVE ME
(右の小さい方です)
この作品にもメインの作品の中で描かれているエンロールがありますね。
同じアイコンを3回描く、その行為が持つ意味とは何なのでしょうか?
作品のサイズが変わればその見え方も変わります。
大きなものと小さなもの、同じモチーフでもその印象は全く異なって来る。
それはまるで視点の変化によって新たな意味が生まれるようにも感じられますね。
作品を見る距離や角度、空間の中でその大きさはどのように感じられるでしょうか?
小さなものは細部に意識が向き、大きなものは圧倒的な存在感を放つ。
それぞれのサイズが異なる視点や感覚を生み出しているのかもしれません。
大きさの違いがどのように響き合っているのか。
CPDはその関係性、そのものを描こうとしたのではないでしょうか?
生存本能
worldとunformd。
世界とまだ形にならないもの。
キャンバスは2枚繋がった構成になっていて、
左下には完成されたworld、右上にはぼやけたunformdという
対立するように配置された言葉がその意味を強調している気がします。
worldは既に定義された世界。
一方でunformdは未完成のまま揺れ動くもの。
世界は固定されたものではなく時代と共に変化し続けている。
そんな視点がこの作品に込められているのではないでしょうか?
更に描かれているのは、海物に食べられそうなキャラクターとそれをスマートフォンで撮影する傍観者。
生存本能とコミュニケーションの関係性を象徴しているように感じられますね。
傍観者は決して悪意を持って写真を撮っているわけではない。
それはただ他者とのコミュニケーションを取るため、すなわち生きるための行動。
食べられそうなキャラクターも撮影する側もどちらも必死で生きているだけ。
そこに善悪の境界線はないような気がします。
完成と未完成、生存本能とコミュニケーション。それらが複雑に絡み合いながら形を変えていく。
この作品が追いかけるのは今私たちが見ている世界とは一体何か?
STUDIO
STUDIO2
この2つの作品のテーマはコミュニケーションと自由。
CPDのスタジオの壁に描かれたグラフィティからインスピレーションを得ているそうです。
スタジオを訪れるアーティストたちが自由にスプレーで描いた壁。
そこには誰かの考えや感情が混ざり合い、制約のない対話が生まれていきます。
ビジネス的な枠組みを超えた縛りのない創造の大切さ。
自由に表現することでしか生まれないものがあるとしたら、
それはまさにこの作品に込められたエネルギーなのかもしれませんね。
そして絵を描くことは言葉を越えたコミュニケーションであり、
線や色を重ねていく、描き合う行為そのものがこの作品重要な部分なのではないでしょうか?
時には合理的でない無駄が偶然生み出す何かを表現している作品とも捉えられます。
そのバランスの中に人生の面白さがある気がしますよね。
Bad Good
この作品は誰もが知っている言葉とその言葉の下に描かれたモチーフで表現されています。
CPDが何を伝えようとしたのか。
なぜこの構成になっているのか?
Badという文字の大きさも何か関係があるのでしょうか?
Goodという文字の中に無数にGoodがあることもとても気になりますね。
そしてその下に描かれた円ロールに突き刺さる紙飛行機。
この紙飛行機は普段使うSNSでもよく見かけますね。
この3つの要素を見て皆さんはどう思いましたか?
Before I because myself
この作品はCPDが小さい頃から描き続けてきたスタイルであり、
普通とは誰かが決めた枠の中で最も目立たない色を選ぶこと。
自分で選んでいるようで実は他人によって形作られているもの。
そんな気づきからこの作品は生まれています。
更にこの作品にはキュビズムの影響も色濃く表れています。
キュビズムはリアルな表現を超えて絵画にしかできないことを追求した運動で、
この作品の中にもそんな視点のずれや様々な見え方が込められているように感じられますね。
そして本作には自己愛と幸せというもう一つ大きなテーマがあります。
絵を描くことで自分自身を見つめ直し物事を整理する。
己を愛す。
この作品に込められたメッセージはただの自己表現ではなく
見る人にも問いを投げかけている気がします。
また今回登場するハートは他の作品とは違い、ピンク色のハートで描かれています。
日常の中にある普通とは一体何なのか?
日常の枠の外に出ることが本当の自分を見つけることに繋がるのか?
この作品を前にそんな問いが浮かんでくるかもしれません。
busy
あなたにとって普通とは何でしょうか?
この作品ではキャラクターがビジーという言葉を発し、
その言葉が再び自分を押しつぶしていく様が描かれています。
忙しいという言葉を発すると言うことで自分を忙しい状況に縛り付けてしまうそのジレンマ。
いわば言霊のようなものを象徴している気がします。
これを象徴するために赤と黄色というパブリックイメージの強い色を使い表現しているのではないかと思います。
この作品を見て言葉の力、そしてその言霊的なニュアンスについて考えさせられます。
もし自分が忙しいという言葉が目の中にし口にした時、
その状況に気づくことができればそれが大きな意味を持つ瞬間だと感じられるのではないでしょうか?
あなたは、このbusyどう感じますか?
Mental buket
メンタルバケット、このタイトルを聞いてあなたは何を思い浮かべますか?
この作品に描かれているバケツは、人の心、そのものを表していると思います。
なぜ、バケツからハートがこぼれているのか?
そして、印象的な「Human」という文字が引き裂かれているのはなぜなのか?
CBDはどんな思いを込めてこの絵を描いたのでしょう?
人は、どれだけ大きな愛や思いを受け取っても、バケツの底から少しずつこぼれ落ちてしまう。
愛も思いも、一度受け取れば永遠に残るものではなく、
時間とともに消耗していくものなのではないでしょうか?
でも、そうであるならば、小さなやり取りの積み重ねが大切になるのかもしれませんね。
ちょっとした言葉や、ふとした瞬間の優しさが、
誰かの心にハートを蒔くきっかけになることもあるのではないでしょうか?
このバケツ、あなたの目にはどう映りますか?
But
たった一言で状況をひっくり返す、強力な接続詞「But」。
日本語にすると「しかし」。
流れを変え、予想を裏切り、物事を反転させる力を持っています。
キャンバスには「GIVE ME TIME TO BLOOM」と同じ、
「エンロール」が描かれています。そして、突然現れる「But」の文字。
それは「咲くための時間が欲しい」という願いに対する、
もう一つの現実を示しています。
時間は無限ではありません。
咲かなければ、咲く前に枯れてしまいます。
この作品は、他の作品より上の方に設置されており
下から覗くと、キャンバスの奥に隠された赤い面が見えるのがわかります。
この赤は、黄色に染められていきます。
赤と黄色は、「But」の力そのもの。
育つ時間が欲しいと願う一方で、何かを変えるには行動が必要。
その葛藤が、この作品には込められています。
明るい黄色の中に流れ込む、血のような赤。
それは、夢や希望ではなく、そこに伴う努力や苦しみも表しています。
何かを変えたいなら、ただ待つだけではいられない。
「But」の先にあるもの、あなたはどう見るでしょうか?
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以上、13点を徹底解説していきました。
筆者は、田舎の実家に住んでいた頃、
自分の見たいものを自由に見ることができず
悲しい思いをたくさんしました。
今回は突然の発表だったことと、
会期も1ヶ月と短めなので観にいくことができない方も多いのではないでしょうか。
本展はアート初心者の方にもわかりやすく解説されていますし、
SNS社会を生きる皆さんに伝えたいメッセージもたくさんあると感じました。
少しでも会場の雰囲気を楽しんでいただき
COIN PARKING DELIVERYさんの作品の魅力が多くの方に伝わっていたら幸いです。
お近くで開かれる際はぜひ足をお運びくださいね^^
最後までお読みいただきありがとうございました!
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